あの加藤とあの課長
源が日本を離れて、早１週間。
毎日が怒涛の忙しさだ。



「加藤さん、これお願いします。」

「うん。」

「加藤さん、お電話です！」

「分かった！」

「加藤さーん！！」

「うん！」



かつてこんなに名前を呼ばれたことがあっただろうかと疑問になるくらいには、呼ばれてる。


外回り行って、会議して、デスクワークこなして。

てんやわんや、ドッタバッタ。
猫の手も借りたいとはまさにこのこと。



「陽萌、あんまり根詰めて倒れないようにね？」



私のデスクにココアを置きながら、晋ちゃんがそう声を掛けてくれた。



「ありがとう。分かってはいるんだけど、こればっかりはねー…。」



そのココアに手を付けながらも、動かす手を止めることはしない。

そんな私に苦笑してから、晋ちゃんは自分の仕事へと戻っていった。


最近では家にも仕事を持って帰らないと追いつかないくらいだ。


よくもまぁ、源は半年以上もこの量の仕事をこなしていたもんだと感心する。

きっと今の私以上に忙しかったに違いない。


（そりゃ倒れもするよね…。）


ココアを飲み干すとジャケットを引っ掴んで、オフィスを後にした。
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