あの加藤とあの課長
言っていて自分で悲しくなったのは、言うまでもないけど。



「欠片も!?」

「そろそろいい頃のような気もするんですけどねぇ。」

「陽萌ー、何やらかしたの?」

「そんなに決め手に欠けるものが…?」



なんて言いたい放題の2人。

そりゃ、結婚を意識していないと言ったら、嘘になる。


この同棲という名の共同生活にだって一切の不満はないし、もちろん源にだってない。


結婚と恋愛は別物だとか、恋愛の延長上に結婚があるだとか世の中の人々は言うけれど。

正直、私にとってはそんなのどうでもいいわけで。


ただ、死ぬまで源の隣にいたいか、それだけ。


要するに、私はいつだって準備万全。
いつでも結婚できる勢いだ。



「…課長も、何か考えあってのことだと思うけど。」

「そうですよね。今までのあれが遊びだったりしたらもう卒倒じゃ足りないですし。」



なんて慰めてるんだかよく分からないことを言い合っている2人。


2人の意見には納得できる。
できるけど…。

(実際、どうなんだろう。)


この同棲だって、始まりは私のストーカー事件だった。

あの時ストーカーされてなかったら、もしも刺されてなかったら…、もしかしたら今も同棲してなかったかもしれない。



「…そろそろその辺考えても、いいのかもしれないね…。」



そう呟いた私を見やって、2人は優しく笑った。


したいか、したくないか。

そう問われれば、私はしたい。
でも、源は…?
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