あの加藤とあの課長
そんな私を震撼させる事件が起きたのは、その翌日のことだった。



「加藤さーん。」

「はい。」

「そーいやさ、聞きましたよー。」



取引先に来ていた私に、禿げ面のおっさんがニヤニヤと言う。


この会社は源の担当なんだけど、今は源が不在だから、期間限定で私が担当している。

正直、この手のおっさんは苦手だ。下心がスケルトンすぎる。





「生渕くん、お見合いしたそうですねぇ。」




心の中で悪態をついていた私は、おっさんが言ったことを理解するのに、少々…、いや、大分時間がかかった。



「……は?」

「またまたぁ。結構有名ですよー? 社長の娘とお見合いしたって!」

「社長の…娘?」

「逆玉じゃないですか、しかも次期社長とは!めめでたいですねぇ。」



ちょっと、待ってよ。
え……、何? 現実の話?

……意味、分かんない、んだけど。



「今回の海外研修もその準備なんでしょう?」

「え…?」



知らない。

知らない。


ナ ニ モ 、 シ ラ ナ イ 。



その後は、どうやって切り上げて、どうやって会社に戻ったのか、正直あまりよく、覚えていない。
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