あの加藤とあの課長

黒幕の正体

源が海外研修に行ってから、2週間ほどが経過した。残り、およそ3週間。

毎日の忙しさに追われる私の元に、一通のメールが届いた。



(……見間違い…、じゃないよね?)



そう何度も確認したくなるのも無理はないと思う。

なんせ差出人は、うちの会社の、社長だったのだから。



『君と話したいことがある。今日の昼休み、社長室に来るように。』



とそんな、簡易的なメール。

だけど業務的ではなく、むしろ私用のような感じのメール。



社長と聞いて、今の私が真っ先に思い浮かべるのは、源のこと。

あの噂はいつの間にか社内中に蔓延していて、当然営業内でもその噂で持ち切りだ。


そして肝心の源とは、未だにその話をできていない。



「陽ー萌っ、お昼行こ!」



そうこうしているうちにお昼になり、ルンルンの晋ちゃんが誘いに来た。



「ごめん、ちょっと用事があって…。」

「そう? んじゃ増田ちゃんと食べて来よーっと!」

「うん、ごめんねー。」



晋ちゃんも増田ちゃんももちろん噂のことは知っている。

だけど気の利く2人だから、特別そのことに触れてくるようなことはしない。


とはいえ、いつまでも避けていられないのは明確で。
< 437 / 474 >

この作品をシェア

pagetop