あの加藤とあの課長
源の噂は社長の耳にも届いていたんだろうか。

私と付き合い始める前の源は本当に節操なしだった…という。



「だが、私の読みは甘かったようだ。」



私に視線を戻すと、スッと目を細めた。



「彼は本気だったようだね。」

「……あの。」

「…なんだね?」

「昼休みが終わってしまいます。業務に支障が出るといけないので…。」



サッとソファから立ち、社長を真っ直ぐに見据える。


本当はこんなこと、許されないだろうけど。

もう、聞きたくない。



「…元専務と常務のターゲットはずっと秘書課の女の子達だった。」



私の言葉を無視して言葉を無視して紡ぎ出す社長。

その言葉は、予想外のもの。



「なぜ営業部の君がターゲットになったのか、分かるかね?」

「……まさか。」

「私が彼らに遠回しに薦めたからだよ。」



思わず、息を飲んだ。



「なぜ部長や源くんでなく、君が大阪出向になったのか。なぜ高山くんが出向でなく、異動だったのか。」

「っ…。」

「私が根回ししたんだよ。君が高山と付き合い、そのまま向こうに残るように。」



頭がガンガン鳴る。
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