あの加藤とあの課長
始業時間を過ぎて、少し経った頃。隣でキーボードを叩いていた源がスッと立ち上がった。
つられて源を見上げた私の手の甲に、付箋を1枚貼り付けた。
『社長からの呼び出し。行ってくる。』
簡潔に、それだけ書いてあった。
今この状況でこのことが周りに知れたら、たちまち噂になるだろう。
そんなことを考えながら源を見上げて、1つ、頷いた。それに頷き返すと、源はさっさとオフィスを出て行った。
「課長と加藤さん、結婚秒読み段階だと思ったのに。」
増田ちゃんと晋ちゃんと一緒にお昼を食べるのが最近では恒例になっていて、今日もそうだった。
ただ今日は丁度電話をしていたから2人に先に行ってもらってて。
「きっとそれを思ってるのは本人たちだよ。」
「そうですかね? あの2人、根っからの仕事人間じゃないですか。」
「そこは否定しないけど…。でも、あの2人はお互いを大事にしてるから。」
「そうですけどー…。」
遅れてきた私はたまたまこの会話を耳にした。
「なんであの2人ってこうも前途多難なんでしょう…。」
増田ちゃんと晋ちゃんの会話を聞いて、思わず苦笑いを零した。
本当、最初から前途多難だよ。
だけどそれも全部、いい思い出。
「早く幸せになって欲しいなぁ…。」
「それには僕も同感。」
そう言って笑い合う2人を見て、心がじんわりと温かくなった。
社長が相手じゃ味方なんていないし、手立ても何もないと、少し諦めていたところがあった。
だけど、ちゃんといるじゃん、味方が。私、何を見てたんだろう。
ここが正念場だっていうのに!
つられて源を見上げた私の手の甲に、付箋を1枚貼り付けた。
『社長からの呼び出し。行ってくる。』
簡潔に、それだけ書いてあった。
今この状況でこのことが周りに知れたら、たちまち噂になるだろう。
そんなことを考えながら源を見上げて、1つ、頷いた。それに頷き返すと、源はさっさとオフィスを出て行った。
「課長と加藤さん、結婚秒読み段階だと思ったのに。」
増田ちゃんと晋ちゃんと一緒にお昼を食べるのが最近では恒例になっていて、今日もそうだった。
ただ今日は丁度電話をしていたから2人に先に行ってもらってて。
「きっとそれを思ってるのは本人たちだよ。」
「そうですかね? あの2人、根っからの仕事人間じゃないですか。」
「そこは否定しないけど…。でも、あの2人はお互いを大事にしてるから。」
「そうですけどー…。」
遅れてきた私はたまたまこの会話を耳にした。
「なんであの2人ってこうも前途多難なんでしょう…。」
増田ちゃんと晋ちゃんの会話を聞いて、思わず苦笑いを零した。
本当、最初から前途多難だよ。
だけどそれも全部、いい思い出。
「早く幸せになって欲しいなぁ…。」
「それには僕も同感。」
そう言って笑い合う2人を見て、心がじんわりと温かくなった。
社長が相手じゃ味方なんていないし、手立ても何もないと、少し諦めていたところがあった。
だけど、ちゃんといるじゃん、味方が。私、何を見てたんだろう。
ここが正念場だっていうのに!