あの加藤とあの課長
「問題なしでよかったですねー。」



ホテルにチェックインしてから、課長の部屋で乾杯をする。

シングルを2部屋、隣り合わせに借りた。


とはいえ、1人での晩酌は寂しくて課長の部屋に転がり込んだ。



「そうだな。」



課長はビールを仰ぎながらネクタイを外した。

その姿がやけに色っぽくて、私は思わず課長から目を背けてしまった。


何やってんのよ、陽萌…! 男の裸だって見慣れてるじゃない…!


チューハイの缶の淵をガジガジと噛んでいると、課長がやんわりと笑った。



「…課長のスタンスって、あれですか。」

「ん?」



仕事を終えた課長は、心なしかいつもよりも穏やかな表情をしている。



「鬼になることでも、憎まれ役になることでもなくて、公私混同禁止、ですか。」



缶のプルタブを見つめながらそう言うと、課長は驚いたように私を見つめた。

私は缶をテーブルに置いて、着たままだったジャケットを脱いだ。



「だからお前は…。」



額に手を当てて溜め息を吐く。



「無防備だ、って、言いたいんですか?」

「……そうだ。」



課長は再び缶に口をつけると、そのままグッと飲み干した。
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