あの加藤とあの課長
「何が無防備なんですか?」



動きやすいようにとセレクトしたパンツスーツの足を組み、テーブルに頬杖をつく。

そのまま微笑んで課長を見ると、課長は表情を強張らせた。



「歓迎会に参加したことですか? その場でお酒を呑んだこと? それとも、晋ちゃんを家に上げて泊めたことですか?」



課長は驚いたように目を見開く。



「それとも、こうして課長と部屋に、2人っきりでいることですか?」



ニヤリと笑うと、課長は「お前…」と呟いた。

そんな課長の後ろの窓に目を向けると、窓に水滴がついていた。



「そろそろ失礼します。」



課長は立ち上がると、何も言わず私に背を向けた。

何を、考えているんだろう。


課長の部屋を出ると、私はその足でホテルのロビーへと向かった。



何がきっかけって、分からないけど。たぶん、直人が言ってたあの台詞だと思う。



『やっぱり生渕さんか。俺、あの人に宣戦布告されたんだよな。』



嘘だと、気のせいだと思っていたかったのに…、何、あの課長の反応。

分かりやすすぎでしょ…?
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