あの加藤とあの課長
早速ニコニコし出した私を、苦笑しながら見つめる源。



「加藤くんにも、悪いことをしたね。」

「い、いえっ。」

「敏にも、悪いことをしたな…。」



自嘲気味に笑みをこぼすと、社長は再び窓から空を見上げた。



「…さぁ、早く戻りなさい。今日も、頑張ってくれ。」

「はい!」

「……はい。」



源と2人、社長室を後にすると、何も言わず顔を見合わせて笑い合った。



「久しぶりに、夕飯でも食いに行くか。」

「……うん!」



こういう会話が恋しかった。

源の隣で当たり前のように笑っていられる、この感じが恋しかった。


エレベーターに乗り込み、営業部のある2階で降りる。



「課長、私は給湯室に寄っていくので。」

「……俺も行く。」



そう言って私のあとをついてきた源。

そんな源に驚きつつ、やっと話せるなんて、少し浮わついてみたり。


給湯室に入ると、いつも通り2人分のマグを取り出し、各々飲み物を淹れていく。



「……片野社長と懇意にしているのは薄々気付いていたが…。」



先に口を開いたのは源だった。



「まさか、退職願を書いていたとはな。」

「あと、ヘッドハンティングの話を少々。」
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