あの加藤とあの課長
「俺と、結婚してくれ。」




私の手を握る手に、力が込められる。



「……源…。」



源の手を、必死で握り返す。


たぶん、そう。
私はずっと、待っていたんだ。



「は、い…っ。」



返事はちゃんと源の目を見て言えた。

だけどそのあとは我慢できなくて、思わず俯いてしまった。


俯いた途端に、涙が溢れてくる。

唇は噛まない。
だってこれは悔しくて流す涙じゃない。悲しくて流す涙じゃない。

幸せで流す涙だから。



「よろしく、お願いしますっ…。」



顔を上げてそう言えば、嬉しそうに顔を綻ばせる源がいた。


左手を持ち上げられて、左手の薬指に指輪がはめられる。

その指輪がまた綺麗で、私はまた涙を溢した。



「こちらこそ、よろしく。」



見つめ合って、照れたように笑い合って。

触れるだけのキスをして。


すごく、幸せだなって、漠然と思ったんだ。



私はあなたに出会って変わった。

あなたも私に出会って変わったと、そう感じているのならば、いいなと思う。
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