あの加藤とあの課長
ホテルの外に出ると、思った通りザーザーと雨が降っていた。

夕方には降りそうだったもん。


ジワジワとシャツに染み込む雨が冷たくて、私の体だけじゃなくて心まで震わせる。

課長のことが震い落とされるようにすっと心の中から消える。すると、残るのは1つの思い。




「…ごめんなさい。」



言葉と同時に、涙が零れ落ちた。


ごめんなさい。直人の想いは伝わってた。悪いのはそれに答えられなかった私。

どれだけあなたを傷付けただろう。


直人と別れてから、やっと泣いた。



心細さに街灯の下へと歩を進めた。

別れてから最初の雨の日、私は必ずこうして雨の中で涙を流す。


泣かないと、苦しすぎておかしくなってしまいそうだから。


とはいえ、明日も仕事…。目が腫れないようほどほどにしておかないと…。



「ふぇ…。」



漏れた嗚咽を止めることもなくただ泣く。

お酒の力もあるのか、次々と涙が溢れて止まらない。



いつからか好きでもない人と付き合って肌を重ねるようになった。

愛されていたくて、求められると安心できて。


望まれるがままのそんなことに、嫌気が射したのは随分と前のこと。


それでも抜け出せずにここまで来たけれど、罪悪感はちゃんとある、失ってない。
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