あの加藤とあの課長
「…一部下に対して、随分と構うんですね?」



その言葉に課長は眉をピクリと動かした。



「お前が部下だから、言ってるんじゃない。」

「…そうなんですか?」



薄く笑うと、課長はそれが気に食わないらしく、私の腕を掴んで乱暴に引き寄せた。



「お前だから、言ってるんだ。」



目の前に迫った課長の顔に、顔に熱が集まっていくのが嫌なほどはっきり分かる。

なんなのこれ。


次の瞬間には、掴まれていた腕を乱暴に引かれてホテルへと足を進めていた。



「痛いです。」



そう言う私を無視してエレベーターに乗り込む課長。腕は、掴まれたまま。

フロントの従業員さんが嫌そうな顔をしたのが見えた。


あ、ずぶ濡れのままだった。化粧とかボロボロだろうなぁ…。

なんて、私は至って呑気で。


目の前の課長の心情なんてこれっぽっちも気にしていなかった。



私から奪ったキーを使ってドアを開くと、先に私を部屋の中に押し込む。



「シャワー浴びてこい。」



とぶっきらぼうに言うと、自分はベッドに腰掛ける。


なんですか急に。というか、ここは私の部屋ですよ。あなたの部屋は隣ですよ。

とは言えるはずもなく。


仕方なく、私は下着類なんかを持ってシャワーを浴びた。
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