あの加藤とあの課長

ヤキモチ妬けた

出張から1週間経ったある日、私は商品企画部の彼と、電車でそこへ向かっていた。



「どうして私と煌(こう)?」

「仕方ねぇだろ、向こう直々のご指名なんだから。」

「はぁ…。」



再来月辺りから、定期的に有名なデザイナーとのコラボ商品を出すらしい。

その関係で今、私たちはそのデザイナーのアトリエに向かっている……んだけど。


なぜか私が直々に指名を受けた。

商品企画部の煌が担当らしいんだけど、どうして私まで呼ばれたのか。



「デザイナー、なんて名前だっけ。」

「ミナトだよ、ミナト。」

「それってさ、本名?」

「そうらしいけど。あぁー、デザイナーでの名前はカタカナで、本名は漢字らしい。」



電車を降りると、迷うことなく歩を進める煌。



「…なんで? 心当たりでもあんのか?」

「…なくは、ない。」



まさかと思いながら記憶を辿る私を渋い顔で見る煌。



「お前、あっちの世界にも伝あんのかよ。」

「伝っていうか、まあ…何人か、いなくはない、かな。」



煌が言うあっちの世界っていうのは、要するには芸能関係の一見華やかな世界のことだ。
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