あの加藤とあの課長
「俺ね、陽萌の大学の先輩なの。」

「いい加減離れてください、ミナトさん。」

「相変わらず切り替え早いなぁ、陽萌は。」



私から離れると、尚ニコニコと笑うミナトさんは相変わらず、大学生の頃のままだ。

中身はもちろん、オシャレなところとか。



「え、ミナトさんて大卒なんですか?」

「うん、専門学校じゃないの。」



そう言いながら私たちを奥へと案内する。

奥の部屋の恐らく打ち合わせ用のソファに腰掛けると、ミナトさんは煌にコーヒー、私にはココアを淹れてくれた。


4年制と、短期部と、どちらもある大学だった母校は、双方の校舎が同じ敷地内にあった。

だから厳密に言えば違う大学なんだけど、生徒の私たちからしたら同じ大学みたいなもんだった。


実際、いくつかの施設は共有だったし。



「陽萌もさ、久し振りなんだから普通に話そうよ。ねっ?」

「…仕事中です。」

「ちょっとだけ! ね!?」



仕方ない、と諦めて溜め息を吐いて、ココアに口をつけた。



「変わらないのはそっちでしょ…。」

「そうー?」



ニコニコと笑う彼は、大学時代からそれはそれはモテていて、王子様的存在だった。

優しくていつも笑顔。



「文句なしの王子様だね。」



なんて嫌味を言ってみる。
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