あの加藤とあの課長
「これデッサン?」



床に落ちていた何枚かの紙のうち1枚を拾い上げると、素敵なデッサンだった。



「きっと湊のことだから、描いてみたら描けちゃったーって感じなんだろうなぁ…。」

「ミナトさんってそういうタイプの人なのか?」

「うん、なんでも器用にこなしちゃうの。」



湊らしいな、この服。

メンズ、レディース、キッズとまんべんなく手掛けているけれど、どこか彼らしさが滲む。



「俺のことよく分かってるねぇ♪」



楽しそうな声が聞こえて、慌ててデッサンを元あった場所に戻すと、電話を終えたらしい湊が戻ってきたところだった。



「…一応は。」



苦し紛れにそう言うと、湊は可笑しそうにお腹を抱えて笑った。



「やっと湊って呼んでくれた。」

「聞いてたの?」

「うーん…。」



突然、湊は顎に手を当てて何かを考え始めた。

こういうとき、大抵突然突拍子もないことを思い付いて言ってくる。



「うん、今度からさ、煌くんと陽萌、セットで来てね!」

「「は!?」」
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