あの加藤とあの課長
会社に戻ると、喉が乾いて仕方がなくて給湯室に向かった。

(これからどうしよう。)


湊の所に通うにしても、やっぱり限界があるし…、でも頑固だしなぁ…。



「はぁ…。」

「加藤。」



溜め息を吐いた瞬間名前を呼ばれて、驚いて振り返ると課長がいた。



「あ、課長もいりますか?」



そういう用件だと思って尋ねると、課長は後ろ手で給湯室の扉を閉めた。


給湯室は一瞬で密室になる。

あまりの狭さに、課長との距離が近い。



「あ、の…。」



そういう用件じゃなかったんだろうか。

身長差と距離の関係で、自然と上目使いになってしまう。



「誰だ、あの男。」

「え?」

「さっき一緒に飯食ってたろ。」

「あ、煌のことですか?」



見られてたのか…。

首を傾げると、課長はなぜか不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。



「名前なんて知らない、あんなチャラい奴。」

「そんな言い方しなくても。」
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