あの加藤とあの課長
そうこうしているうちに、マンションの前に着いてしまった。

まだ着かなくてもよかったのになんて、私はどうしてしまったんだろう。



「ありがとうございました。」



お礼を言い車を降りてドアを閉めると、助手席の窓が開いた。


とそのとき、視線を感じた。

(何…?)


辺りを見回すも、人の気配はあるものの影はどこにも見当たらず。



「どうした?」

「いえ…。」



ストーカー…かな…。

普通ならここで恐怖するところなんだろうけど、私の場合は残念なことに慣れがある。


だから課長に泣きつくなんてことはない。



「…何かあったら言えよ。」



私の態度から何を感じ取ったのか、課長は深刻そうな顔つきでそう言った。



「はい。」



そう微笑むと、課長は少し安心したかのように表情を緩めた。

エントランスに入りポストを見ると、ポストが開いていた。


(…うわ。)


中身も開封されていて、思わず顔をしかめる。

今回は少し曲者かもしれない…。
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