あの加藤とあの課長
6時に煌とロビーで待ち合わせ。接待の相手は、湊だ。



「悪い、待ったか?」

「ううん、さっき来たとこ。」

「仕事関係になると本当しっかりするよなぁ、お前…。」



半分呆れ声の煌を無視して歩き出そうとしたとき、私のケータイが鳴った。

仕事用だ。相手は、課長。



「ちょっとごめん。」



煌に断ってから電話に出る。



「はい。何かありましたか?」

『いや、特には。』



電話口から聞こえた声に呆れそうになる。



『兄貴と一緒なら大丈夫そうだな。』

「え?」



煌と一緒とは言った記憶がない。


ふと視線を上げると、3階の廊下からこちらを見下ろす課長がいた。

うちの会社のビルは4階までが吹き抜けになっている。なんでも、その方が広く見えていいんだとか。



「…仕事してください。そしてこれは仕事用のケータイです。」

『じゃあプライベート用の番号とアドレス教えろよ。』

「……はぁ。今度教えますから。」



上手いというか、なんというか。



「行かなきゃなので切りますよ。」



そう言って彼を見上げると、薄く微笑む彼と目が合った。
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