あの加藤とあの課長
『あぁ、帰り、遅くなるなよ。』



……目的はそっちか。

呆れ半分で笑うと、課長も柔らかく笑う。



「遅くならないように気を付けます。」

『あと、呑むなよ、兄貴がいても。』

「ヤキモチですか?」

『心配してるんだ。』



その言葉に頬が緩む。

今まで、こんな人いた? 私にろくに手も出さず、でもこんなに気にしてくれて。



『気を付けろよ。』

「はい。」



こんなにも、愛を伝えてくれる人。

電話を切ると、私は煌の元に駆け寄った。



「お待たせ、行こ!」



電車に乗ると、煌が楽しそうに私を見ながら言ってきた。



「なんかいい感じじゃねーの?」

「ん? お肌の調子はいい感じ♪」



たぶん、幸せなんだと思う。



「あっそ。」



私の返事につまらなさそうに返事をすると、煌はケータイをいじり始めた。
< 72 / 474 >

この作品をシェア

pagetop