あの加藤とあの課長

たゆたう煙の中

順調に6月を終え、7月に突入。世間は夏休み目前で盛り上がる今日この頃。



「羽目を外しすぎない程度に楽しんでくれ!」



社長の言葉で宴会が始まった。今日から2泊3日の社員旅行なのです。

参加するのはこれで4回目になる。


毎年毎年、国内だけれど場所を転々としている社員旅行の行き先は、今年は有名な温泉地。



「なーんか盛り上がりすごいよね、毎年。」



隣の晋ちゃんに言うと、肯定の言葉が短く返ってくる。

そんな晋ちゃんを含め、皆浴衣姿だ。もちろん課長も例外ではなくて。


(放つ色気が違う…。)

社内中の綺麗所に囲まれながらお酒を飲む課長は、顔色一つ変えていない。



「陽萌は今年もなんかやるの?」

「うん。」



毎年、何人かがステージでちょっとした芸を披露することになっている。


私はどういうわけか頼まれ続けて4年目。

毎年歌を披露していた。



「そろそろ新しいのを取り入れてみようと思って♪」

「新しいの?」

「うん。」



毎年歌だけじゃ飽きるでしょ。



「加藤さーん、そろそろよろしくー!」

「あ、はい!」



実は人前に立つのは嫌いじゃない。



「じゃ、行ってくるね。あ、これよろしく!」



上に着ていた浴衣と帯を晋ちゃんに預けて、私はステージへと急いだ。
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