あの加藤とあの課長
課長の腕からなんとか逃げ出すと、私は部屋の外の露天風呂に向かった。

仕切りがきちんとされているのをいいことに、思いきり浴衣を脱いで一人露天風呂を満喫する。


ノコノコついてきたけど…、私、どうしよう。

このまま、ここに一晩? そうしたら、私たちはどうなってしまうのだろう。


この苦しさは、どうなるのだろう。


胸に手を当てると、私はそっと目を閉じた。



「…はぁ。」



晋ちゃんの所に行きたいところだけど、そんなこと…、できるわけがない。

(そんなことしたら…。)


それこそ、関係が崩れてしまう。



「難しい…。」



……あのとき。

――『今泉の所に行くか? それとも、俺の部屋に、来るか。』


確かに私は、自分から晋ちゃんじゃなくて課長を選んだんだ。

(きっと、それが答え。)



空を見上げると、満天の星空が広がっていた。
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