あの加藤とあの課長
お風呂を出て部屋に戻ると、冷房が効いていて心地よかった。



「随分長かったな。」



ビールを飲みながら私にそう言う課長は、また煙草を吸っていた。



「課長、まだ呑むんですか? あと、煙草吸いすぎです。体に悪いですよ。」

「お前なぁ…。」



一気に捲し立ててから畳の床に適当に腰を下ろすと、課長は私に苦笑いした。



「気付けだからいいんだ。」



と言ってまた煙草を吸う。



「…気付け?」

「これがなかったらお前、とっくに俺に喰われてたぞ。」



そういえば…、出張のときとか、何かと煙草吸ってたような気がしないでもない。

なるほど…。



「ふ、ふふっ。」



突然笑い出した私を怪訝そうに見る課長。だけど、私の笑いは止まらない。

だって、なんだか可笑しい。



「お前はよく分からないな。」



煙草を揉み消し、残りのビールを一気に飲み干すと、課長はおもむろに立ち上がった。

かと思ったら、私の方へ寄ってきて、私の前に胡坐をかいて座る。
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