あの加藤とあの課長
(そう、なのかもしれない。)

なんてぼんやりと考えながら、昔からよく火種となったこの癖に有り難味を感じていた。



「お前は、思ったことをストレートに口に出しすぎる。」

「癖なんです。」



照れ隠し半分、衝動半分で課長に抱きつくと、課長の鼓動が聞こえた。

お酒を呑んだせいか、心なしか早い。



「だからこそ、いい。」



全てを受け止めるかのように私を抱き締める課長。



「陽萌。」

「なんですか…?」



顔を上げることなく返事をすると、課長は私の耳元に唇を寄せて言った。



「好きだ。」

「課長…?」



ふと顔を上げると、柔らかく微笑む課長と目が合った。



「まだちゃんと、言ってなかったと思ってな。」



あぁ、そうか。
私には、この人が必要なんだ。

課長の笑顔を見つめて、漠然とそう感じた。



「課長。」

「ん?」

「私にはあなたが、必要です。」



優しさを帯びた課長の目が、愛おしいものを見るかのように細められる。



「側に、いさせてください。」
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