御子の恋
「…時々分からない。」
さくらは呟く。
「んな事はどうだっていーんだよ。さくら。お前がココに居るから俺たちも居れるんだよ。」
一つわずかに区切りながら慰めるように話した。
「…そうだね。颯太。だから言ったのよ。ダメだって…。」
「やだやだ。諦めるもんかっ!!」
「聞き分けのねぇガキだな。」
さくらは俺の言葉で頷きながら、溜息。
「なら…見せるしか無いね…?」
さくらの目が…真っ赤に染まり…瞳に“真”という文字が書かれた。
「始めてだっけ?私は記憶までも操られるの。ただし…自分のだけ。」
ふぇー…。
「それじゃ良いかな?”真実の記憶“!!」
さくらが言った途端、周りが渦巻いた。
「うわぁ?!」
「大丈夫。幻覚よ。」
さくらは平然。
下をみていたから、俺たちも見た。
…?
「ココは…颯太の部屋。真実の記憶は、私が実際に体験した事を見せる技よ。」
ふぇー…。
ガツッ…バキッ…。
?!
さくらは颯太に殴られていた。
身体中…アザだらけだ…。
「颯太。コレでも忘れたわけ?」
「違う…僕じゃない。幻覚なんだろ?」
「さっきも言った。実際に体験した事を見せる技。つまり…コレは…。」
「…本物…。それじゃ…。」
「そうだよ。風花。あんた達が旅行行ってる間にヤられた事。」
旅行?
「知らんかったか…。風花達は、私を…四歳の私を置いて…外国に旅行しに行ったのさ。」
はっ…?
「颯太。諦めろ。真実の記憶は実際の事だ。毎日殴られたコッチの気持ちも考えなさい。」
「………。」
いつの間にか図書室に戻っていた。
颯太はゲンナリ。
「帰ろう。疲れた。」
さくらはスタスタ歩いてしまった。
「ちょっと…待てって…。」
俺たちも後を追った。
「絶対…僕のものにしてあげるよ…さくら。」
颯太は写真を眺めた。
そしてニタリと笑う。
まさか…颯太があんな事を考えていたなんてな…夢にも思わなかったんだ…。