“スキ”の表し方
あ。
なんだか。
今なら、言える気がする。
「あの、せんせっ・・・・・。
私、私、先生のこと・・・」
『すき』って言う前に、
先生が私の唇に人差し指を当ててきた。
「その続き、まだ言うな」
先生が真剣な顔で言ってきた。
私はハッとして、
先生から目をそらした。
「卒業したら、聞かせてくれるか?」
「せんせ・・・・。
私、期待・・してもいいの?」
私は泣きそうだった。
胸がすごく熱くなった。
「それは、言えない。
如月は俺の大切な生徒だ。
その生徒を俺の一言で傷つけるわけにはいかない」
先生の言葉が、
すごく温かい。
でも今の私は、
先生の『特別』にはなれないんだね。
それがすごく悲しくて。
先生の優しさが悲しくて。
好きな人に『すき』が伝えられないって、
こんなに悲しいんだね。
高2の春。
私は初めて『伝えられない悲しさ』を知った。