王に愛された女 番外編
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王宮の塀を越えようとするのは、王子としてあるまじき行動である。
そのことは、カイルもよくわかっていた。
「……王子。顔を上げなさい」
父の言葉に、カイルは顔を上げた。
顔を上げると、視界の真ん中には玉座に座る父である国王が、視界の隅にはカイルの両端の通路に座る重臣たちがうつった。
「…何故、塀を越えようとしたのだ?」
父は前髪が長いせいで目が隠れている。それ故、彼がどんな表情を浮かべているのかがわからないが、おそらくは怒っているのだろう。
「…答えないのか。この王宮にはすべてのものがそろっている。それでも外に行きたい理由は…」
そこで父が言葉を区切った。
カイルは息を呑む。
「…イアルに会いに行きたかったか」
ドックンッ
心臓が大きな音をたてた。