王に愛された女 番外編




 風が吹き抜けていく。

 ミィナはバルコニーから顔を出し、息を吐き出した。

 ミィナの父は重臣の中でも地位が高い。

 だからミィナの家は広くて、そこらへんの貴族の家よりも豪邸だ。

「…ねぇお母様?」

 ミィナは自分のベッドに腰かけている母に声をかけた。

「どうかした?」

「私、少し城下町に行ってきていいかしら」

「いいけど、急にどうしたの?」

 母親に何か言えば、こんな対応ばかりしてくる。

 ウンザリだった。

「お小遣い、溜まったから奴隷でも雇おうかしらって思っただけよ」

 ミィナはベッド脇のカバンを持ち、部屋のドアを開けた。

「お母様、部屋のドア、ちゃんと閉じておいてね」

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