王に愛された女 番外編
その樹は二本の木が一本に交わった樹である。
「あぁ、あれか。あれは夫婦樹だ」
それだけ言って、父は説明を終えた。
「夫婦樹?なんでそう呼ばれているの?」
クリスティーヌは再び説明を求める。
「あの二本の樹は、普通じゃ考えられないくらいに絡み合っているだろう?その様子が夫婦のように見えるからだと聞いた」
父はそれだけ言って夫婦樹から目を逸らす。
「へぇ…」
王宮に出入りしていない――否、それどころか市場にさえ来ない父がそれだけ知っているのだから、それほど有名な樹なのだろうとクリスティーヌは思った。
「…ねぇ、あの樹、見てみたいなぁ。王宮に入って見てきちゃダメ?」
聞いた途端、父の横顔がサッと険しいものに変わった。
「お父様?」
「ダメだ。絶対に行くな」
聞いたことがないくらい厳しい父の口調に、クリスティーヌはハッとした。