王に愛された女 番外編
イアルは、近くにあった円卓に備え付けられた椅子に腰かけた。
「今日は何の用があって来た?」
単刀直入だな、とイアルは思った。
父親なら、もう少し身を案じていてほしかったのだ。
だが、彼は全くそうではないらしい。
「…僕ももう、それなりに大人になりました」
イアルはそう告げた。
「金が欲しいのか?それとも、大人になったから重臣となって王宮に戻りたいのか」
王がイアルをバカにしたような声色で今にも笑い出しそうな口調で言う。
それが、イアルには悔しくて仕方なかった。
いや、それよりも悲しかった。
父親なのに父親らしい振る舞いをしない彼に、腹さえ立った。
「違います」
怒りを抑え、イアルは震える声で言った。
「なら、何用だ」
「僕は、もう二度と王宮に戻れなくても構わないと思っています。ここに来るのも、これが最後となるでしょう。だから王様、最後に一つお願いがあるのです」