王に愛された女 番外編
王宮内の肖像画の二人が、今目の前にいる。
しかも、亡くなったと聞いた二人だ。
「どういうことだ?」
カイルが口を開いた時だった。
王の死を聞いて駆けつけていた群衆が、パッと左右に分かれた。
「なんだ!?」
前国王に似た男が、声を上げる。
群衆の間から風のように駆けてきたのは、刃物を所持した男だ。
「ぐはっ」
カイルは、一体何が起きたのかわからなかった。
ただ、自分の顔に、ピッと跳んできた生暖かい物が、血のように臭いという認識だけはあった。
「お父様!!」
さっきまで傍にいたクリスティーヌが、さっきの緑の目の男に駆け寄って、涙を流している。
「しっかりして!!」
泣き叫ぶ彼女の反応から、男が死んだ――或いは、重傷を負ったことはわかる。
「医師を呼べ」
カイルはアリシアに言った。