王に愛された女 番外編
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青かった空が、赤く染まった。
もう夕方になるなんて、時が経つのは早い。
「…クリスティーヌ、大丈夫かな…」
彼女のことが気がかりで、カイルはあの後も王宮に戻らなかった。
父は、前国王に似た男が刺された後、息を引き取ったことが確認されている。
もし、このままクリスティーヌが死んでしまったら、自分は一度に大切な人を二人も失ったことになる。
そんな事態だけは避けたかった。
「…中に入られてはいかがですか?」
ロッドに言われ、カイルは首を振った。
「いや、まだ入らない。クリスティーヌが無事だとわかるまで、絶対に」
カイルが言うと、ロッドはため息を漏らし、
「では、一度外の様子を見てきます」
とだけ言うと、王宮の敷地を出て行った。
ロッドが帰ってきたのは、空が墨のように黒くなったころだった。
「どうだった?」
カイルが聞くと、ロッドは首を横に振る。
「それが、どこにもいませんでした、王子様」