王に愛された女 番外編




◇◆◇◆

 青かった空が、赤く染まった。

 もう夕方になるなんて、時が経つのは早い。

「…クリスティーヌ、大丈夫かな…」

 彼女のことが気がかりで、カイルはあの後も王宮に戻らなかった。

 父は、前国王に似た男が刺された後、息を引き取ったことが確認されている。

 もし、このままクリスティーヌが死んでしまったら、自分は一度に大切な人を二人も失ったことになる。

 そんな事態だけは避けたかった。

「…中に入られてはいかがですか?」

 ロッドに言われ、カイルは首を振った。

「いや、まだ入らない。クリスティーヌが無事だとわかるまで、絶対に」

 カイルが言うと、ロッドはため息を漏らし、

「では、一度外の様子を見てきます」

 とだけ言うと、王宮の敷地を出て行った。

 ロッドが帰ってきたのは、空が墨のように黒くなったころだった。

「どうだった?」

 カイルが聞くと、ロッドは首を横に振る。

「それが、どこにもいませんでした、王子様」

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