王に愛された女 番外編
「――様?王様!!」
テアンの声でカイルはハッと我に返った。
「な、何だ…?」
「もう十回目ですよ」
十回目。それが何の回数なのかカイルは少し考えてから一つの結論に辿り着く。
「すまない」
その回数は、カイルが授業開始からボーッと上の空になっていた回数だ。
「まだ開始から三十分ですよ?」
これではカイルは三分に一回、ボーッとしていたことになる。
だが、上の空にならない方がおかしいのだ。
「王様、授業の間くらいはちゃんと集中していただかないと」
「まだ儀式を行っていないから俺のことは王と呼ぶな。それに、クリスティーヌを失ったんだ、集中するなどできない」
カイルは教科書を閉じ、テアンを睨む。
「王子様…。愛人の死など、いつか必ず訪れるものです。ただ、死が早いか遅いか。違いはそれだけなんです」
テアンが静かに言った。
「なんでなんだ…。なんで俺の手に入りそうになったところで逝ってしまったんだ…」
カイルは拳を机に叩きつける。