王に愛された女 番外編
「王様、そろそろ視察に参りますが」
ロッドに言われ、カイルは部屋を出た。
こんな気分が落ち込んでいるときは、外へ行くのが一番だった。
気晴らしになればいいんだが、と思いつつカイルは馬車に乗り込む。
今日の視察は、城下町を回るだけだった。
オラシオンの代から不景気が続く城下町の、金回りをよくする案を出す為の視察なのだ。
◇◆◇◆
どのくらい馬車で移動したのだろう。
途中で、一度城下町の店に入ることをカイルは提案した。
視察なら、店がどんな状況なのかを確認したかったのだ。
蜘蛛の巣が張った老舗の店へ入る。
「いらっしゃいませ!」
そう声を上げた少女の顔を、カイルは食い入るように見つめた。