王に愛された女 番外編
少年は顎に手を置いた。
上手い言い訳でも考えているのだろうか。
クリスティーヌは、彼が口を開いて理由を告げても、絶対に信じないことを誓った。
「…もちろん、答えてやる」
彼の第一声はこれであった。
クリスティーヌは何も言わず、ただ彼が“上手い言い訳”を言うのを静かに待った。
「俺には兄がいるんだ。兄は、城下町にいるんだ」
その言葉にクリスティーヌは後ろ向きに転びそうになった。
これは、言い訳にしか聞こえなかった。自分の身の上話から始まる理由など、クリスティーヌは聞いたことがない。
そもそも、クリスティーヌは人と出会ったことがほとんどないのだが。
「…で?」
クリスティーヌは話の先を促した。
「兄に、会いに行きたくなった」
身の上話からの、いきなりの理由にクリスティーヌは拍子抜ける。
話を聞いていてわかったのは、この少年が言い訳をするのが下手だということくらいだ。