王に愛された女 番外編
クリスティーヌはヤレヤレと思いつつ、話題が逸れていることを思いだした。
「で、あなたは結局何者なの?なんで塀を越えようとしていたの?」
「…だから、兄に会いに行こうと…」
クリスティーヌは、話が矛盾していることに気付いた。
「なんで?兄に会いに行くのに塀を越える必要って、ある?」
「…は?」
少年が素っ頓狂な声を上げた。
「だから…「兄に、勉強を教わろうとしただけだ」
クリスティーヌの言葉を、少年が遮る。クリスティーヌはムッとしたが、何も言わなかった。
「…あなた、やっぱりそれ嘘でしょ」
「はぁ?」
「私をだまそうと考えた言い訳で、本当はやっぱり泥棒なのね?」
でなければ、彼が塀を越えようとした理由など考えられなかった。
少年は本当は泥棒で、今の言い訳は逃れるための口から出まかせなのだ。
間違いない、クリスティーヌはそう思って納得した。