王に愛された女 番外編




 クリスティーヌはヤレヤレと思いつつ、話題が逸れていることを思いだした。

「で、あなたは結局何者なの?なんで塀を越えようとしていたの?」

「…だから、兄に会いに行こうと…」

 クリスティーヌは、話が矛盾していることに気付いた。

「なんで?兄に会いに行くのに塀を越える必要って、ある?」

「…は?」

 少年が素っ頓狂な声を上げた。

「だから…「兄に、勉強を教わろうとしただけだ」

 クリスティーヌの言葉を、少年が遮る。クリスティーヌはムッとしたが、何も言わなかった。

「…あなた、やっぱりそれ嘘でしょ」

「はぁ?」

「私をだまそうと考えた言い訳で、本当はやっぱり泥棒なのね?」

 でなければ、彼が塀を越えようとした理由など考えられなかった。

 少年は本当は泥棒で、今の言い訳は逃れるための口から出まかせなのだ。

 間違いない、クリスティーヌはそう思って納得した。

< 28 / 210 >

この作品をシェア

pagetop