王に愛された女 番外編
イアルは窓から顔を出した。
冷たい夜風がイアルの頬を撫でる。
「今日は風が心地いい。少し散歩にでも出るか」
イアルは呟いて、窓から顔を引っ込めると、玄関へ向かった。
イアルの家は、彼が自分で建てた家で、丸太を組んで作った、杭を一本も使っていない家である。
「…王宮から迫害されて、もう四年か。月日の流れは早いものだ」
イアルはまた呟く。
口の中で呟いただけの言葉だが、誰も通らない静かな夜道によく響いた。
「あれからいろいろな町に住んではみたが、この城下町が一番落ち着く…」
イアルは足を止め、空を見上げた。
イアルの頭上に、一番星は輝いている。
「…―――アイツは、元気かな…。父様も母様も元気だろうか…」
一番星は、イアルにとっては思い出深い星だった。
イアルの脳裏に思い出がよみがえる。それをイアルは慌てて止めた。