王に愛された女 番外編




 カイルは、次期王になる男だ。すなわち、この王国の王子である。

 それ故、着ている服は金の刺繍を施された王族の衣装なのだ。青い膝までのローブの上に黒いローブより長い丈のコートを羽織り、白いズボンを覆うような膝下までの黒いブーツを履いている。

「…さて、どうしようか」

 カイルは父譲りの銀髪を掻きむしった。

 金色の目を泳がせ、これからどうするかを思案する。

 カイルは、自分が木登りできないのはこの服のせいにすることにした。そして、着ているコートを脱ぐと、高い塀の向こうへ投げてみた。

 弓の稽古をしていたせいで腕力が鍛えられたためか、コートは上手い具合に塀を越えて行った。

 カイルは次に、腰に巻きつけている紐で膝まであるローブの裾をズボンに縛り付けた。

 これならローブが邪魔になって木登りができいなんてことを起こり得ないだろう。カイルは自己満足し、ローブの袖をまくり上げると樹の幹のでっぱりに右手をかけた。

 右手の少し上のこぶに左手を乗せ、右足を根の近くのこぶに乗せる。

 右足に体重をかけ、右手で一番下の枝を掴んだ。今度は左足をこぶに乗せ、左足に体重をかける。そして左手を絵だの近くのこぶに乗せ、右手で掴んだ枝に跨った。

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