王に愛された女 番外編
「失礼ですが、あなたはこの間、王宮に来ていましたか?」
突然現れた男がクリスティーヌにそう尋ねた。
クリスティーヌは戸惑ったが、すぐに頷いた。
「はい、行きました」
クリスティーヌの答えに、一緒に遊んでいたテアンが驚きの表情を浮かべる。
「…ダメじゃないか、クリスティーヌ。お父さんとお母さんから王宮に行ってはいけないって言われてるんだろう?」
テアンに言われ、クリスティーヌは俯いた。
「お願いテアン。お父様たちには言わないで?」
「わかった、僕と君の秘密にしよう」
テアンの言葉を聞いてから、クリスティーヌは訪問者に向き直った。
「ところで、何の用ですか?」
「あぁ、言ってなかったですね」
訪問者は若くも年寄でもなかった。三十代半ばくらいで、髪は黒い。
「とある方から手紙を預かってきました。おそらく、あなた宛てだと思うのですが…」