王に愛された女 番外編





 微かに、文字が見えた。

「あぁ、それは炙り文字だな」

 いつからいたのか、父が言う。クリスティーヌは父を見た。

「え?」

「貸してみな」

 父はそう言って、手紙をかっさらうと蝋燭の火の上に手紙を翳す。

「……どう?何か見える?」

「あぁ、読める。読めるが…見たところこれは暗号だな」

「暗号?」

 クリスティーヌは父の傍まで向かった。

 確かに隠れていた文字が浮かび上がっているが、暗号のようだった。

「…東から現れ、西に消える者?」

 クリスティーヌは暗号の一文目を読み上げた。暗号というよりは、なぞなぞのようだ。

「…不動の道理だ…?」

「俺の名は…の後は何も書かれていない」

 父が手紙の最後を指さして言った。

「あぁ、この俺が誰か当ててみろ、という文章以外はな」

 クリスティーヌは顎に手を当てた。

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