王に愛された女 番外編





 この“東から現れ、西に消える者”の“者”が“物”なら答えが“太陽”であるとわかる。だが、これが人だとなると、わからない。

 クリスティーヌは首を捻ったまま考え込んでしまった。

「クリスティーヌ、とりあえずごはんにしよう」

 父が言い、それから立ち上がる。

「ごはんだから呼びに来たことをすっかり忘れていた」

 父は「先に行ってるぞ」と言い残して部屋を出て行った。

 クリスティーヌも立ち上がる。

「…太陽みたいな人…かぁ…」

 呟きながら歩き出した。

 考え事をしていると、周りが見えなくなるのが人――否、生物の特性だ。それ故、クリスティーヌは近くにあった書棚に体をぶつけてしまった。

「しまった…ここには書棚があったんだ…」

 尻もちをついたクリスティーヌは、書棚から落下した書物を拾い上げた。

 落下した本の一冊が開いた上体で落ちている。クリスティーヌはその本を拾い上げ、ハッとした。

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