王に愛された女 番外編
「ふー」
カイルは額に浮かんだ汗玉を拭う。
一番下の枝だから、あまり高い位置にいるわけでもないが、下を見下ろすと少しだけ恐怖を覚えた。
その恐怖を追い出すように上を見上げるが、上の方は今いる場所よりも上りにくそうだった。
枝の感覚が狭いのはいいが、葉が枝を覆っているし、足場になるコブもあまりないように見える。
「…こんなんじゃ、塀は越えられないな」
気合を入れるように頬をペシッと叩き、カイルは枝の上に立つ。その拍子にバランスを崩した。
慌てて幹にしがみつくが、そのまま体は傾いていく。幹にしがみつた両腕もむなしく、体の体重移動に負けてカイルは地面に叩きつけられるようにして落下した。