王に愛された女 番外編
「王子様!!何をなさっているのですか!?」
甲高い声に、カイルは身を起こした。
口元を手で覆った女人が、エプロンをなびかせて走ってくる。
「…王子様、そんなところで何をなさっていたんです?」
「…考え事だ」
カイルはそれだけ言って立ち上がると、女人の脇を通り抜けた。
カイルにとって女の中でも、この世話役の女人が一番嫌いである。それ故、カイルは彼女の名を知ろうとしたことがなかった。
物心ついた頃に、名前を覚えたような気はするが、その後、いつの間にか忘れていたようである。
「まさか、塀をよじ登ろうとしてはいませんよねぇ?」
不意に女人が口走る。
カイルはハッとして足を止めた。
「な、何言ってるんだよ」
「その恰好は一体、何なんですか?」
聞かれてカイルは自分の恰好を見下ろした。