王に愛された女 番外編




 ローブの裾は紐で縛られ、袖をまくっているため腕は剥き出しだ。

 気付かなかったが、掌には土色の付着物が見られる。おそらく、樹のこぶに触れたときに着いたのだろう。

「…王子様。お召しになっていたコートはどうなさったのですか?」

 カイルはハッとした。

 コートは、さっき塀の外に投げてしまったのである。

「…そ、それはだな…」

 カイルはいい言い訳が思い浮かばず、チラッと女人を見た。

 女人が、ニッと笑う。女なのに下品な笑い方だとカイルは思った。

「…王子様が倒れていたのは夫婦樹の下で、おまけにその恰好。もしかして、塀を越えようとしていたのではないですか?」

 女人が名推理を披露する。

 カイルは図星を突かれて反論できなかった。

「黙っているということは、図星ですね?」

「…うぐ…」

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