最終面接
「ああ…誰れだったっけかな。
歳は取るもんじゃないな。
…お前の元部下の生き写しが
面接に来たらしいな。
…ホント、名前が出て来んよ。
儂、接待されたときに、確か
横でニコニコ笑ってて…
あの名物姐さん…誰だったっけ?
ダメだ。名前出てこないな。」
……このジジイ……
まさかの、レナの接待を
経験してたとか、あり得ないな。
ホステス顔負けというか、
寧ろ、まんまホステスレベルの
采配と立ち振る舞いの
あの名物接待の経験者とはーーー
まったく以って、初耳だ。
今でも、こちらの元役員達から
聞く事がある。
会員制クラブ並みのレナの
接待術。
持ち前の器用さと酒好き。
仕事柄身に付いた、経済及び
経営知識と経営陣が好む、
度胸の良さと強い者にも屈しない
正義を貫く姿勢。
アイツは、そもそも
重役キラーだったな…などと
今更な…事を思い出す。
「カノジョ、亡くなっていたって?
お前、焼香くらい行ったんだろな?」
冷めた眼差しが注がれる。
「…私も、あの面接で初めて
聞いたものですから。」
暗に、行っていない事を
匂わせれば。
「…今だから…言うがな。
ああ、お姉さん、コレ
おかわりね。」
ちょっと、心地悪そうに
元上司が切り出した。