最終面接




「ご無沙汰しております、
東條さま。本日のお部屋で
ございます。」


急な接待で運転できなく
なった時に、世話になっている
馴染みのホテル。


あの日、“ゆりちゃん”へ
連絡をしたのも、
このホテルだった。


「皮肉なものだな…」


日付も変わる時分の
エレベーター内に
自分の声が落ちてゆく。

…あの日と、同じ部屋


ネクタイを緩め、シャツの
ボタンを胸元まではだける。

ハンガーにジャケットと
ネクタイをかけて、
焦る気持ちを堪えながら
携帯電話を取り出し、
アドレス帳を検索する。


「あった。」


早る心を抑えながら、
目的の番号をタップするけど





「…何で…。」



“おかけになった電話番号は
現在使われておりません。”


繰り返し聞こえたアナウンスに
握力を失くした掌から
端末が滑り落ち、
ベッドの上でバウンドする。


拾い上げる気力も失くして
ベッドの上に転がった。



















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