誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
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「ここかぁ」
「すげぇな」
「あぁ」
皆の前には西洋の壮麗な城館がそびえ立っている。
これが“湖の貴婦人”が住まう場所だ。
ちなみに場所は人間界でいうイギリス、湖畔地帯。
一般人には蜃気楼でできる城館として幻とされている。
元老院は課の舎館がそれぞれの課の長の趣味の様相で建ち並んでいる。
西洋派が多いので、近藤達は一度も外国の城を直に見たことがないというわけではなかったのだが、個人のものとしてはこれが初めてとなる。
想像以上のものに、一同は感嘆の言葉しか出てこれずにいた。
「………………ほら、行こうか」
「おい、こら待て。そっちは逆方向だぞ」
「グエッ」
この期に及んで逃亡を試みた奏の首根っこを土方が掴み上げた。
「ちょっ、はなっ、離してっ!!」
「離すか」
「はじめくーん!!」
「何だ」
「この状況を間近で目撃して何だって聞けるのもすごいと思うけど、まぁいいや。助けて!」
「…………総司、珠樹。行くぞ」
「わっ危ないなぁ」
「押さないでくれない?」
「ちょっ、はじめくーん?」
「…………諦めろ」
今にも土方から奏を取り返そうとしていた二人の背を押しながらの斎藤のぼそりと一言。
奏は涙を飲んだ。
そのまま城館のエントランスへとズルズルと引きずられていく。
その後ろに皆は続いた。