誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
「主はこちらでお待ちです」
「皆様、ご準備はよろしいですね?」
「あぁ」
「いつでもいいぜ?」
「よろしくお願いします」
皆の了承の言葉を聞き、双子の片割れが扉をノックした。
「主様、元老院から客人が参られました」
「通しなさい」
中から女性の声がした。
それを受け、双子が扉を静かにキィーッと開けた。
「待ちくたびれた。さぁ、こちらへ参れ」
「失礼します」
部屋の中は広く、大きなソファーとテーブルがあり、それからティーセットが主人である貴婦人の横に準備されている。
貴婦人はもうすでに一人掛け用のソファーに座っており、手に持っていた扇で前のソファーをさした。
勧められるがままに軽く一礼して皆は席についた。
「貴婦人、ご健勝のようでなによりでございます」
「そなた、ちっとも話相手に来ぬ。そなたの主もじゃ」
「なにぶん立て込んでおりまして。……御存知でしょう?」
「まぁな。まぁ、よい。…………それより、この者達が例の人間でありながら、なかなかの戦いぶりを見せたという?」
「はい」
貴婦人の目がキラリと光ったような気がした。
それには近藤達も気がついたようだ。
奏の方にチラチラと視線を飛ばしてくる。
やはり、近藤さん達が狙いか。
厄介なことを言われなければいいが。
なにしろ前科がある。
一概にはないとは言えず、奏も内心困り果てていた。