誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
友がため
第四話─襲撃─
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「……うわ」
「ここもか」
「分かってると思うけど、吸っちゃダメだよ?」
一応ついてきた二人に念押しして、奏は懐からレオンから預かってきた清水を辺りに撒き散らした。
すると、龍脈の歪みから湧き出ていた障気が霧散していった。
それも当然、元老院の第五課の舎館に隣接している聖堂でレオンが自ら作ったホンモノの清水、聖水だ。
一気に空気が清浄化されるさまに、ついてきた二人、沖田と斎藤は感嘆の声をあげた。
他の皆も、こうして龍脈の歪みや障気、障気にあてられて手に負えなくなった妖達の対処に追われている。
何をするにも叶わなかった百五十年間を取り戻すかのような働きを見せる近藤達に、人間の元老院入りを良く思っていなかった者達も目の色を変えた。
まだごちゃごちゃと言う者達もいるが、そこはほれ、実力がモノを言う実力社会である。
土方、山南は第二課、島田さんは第三課の都槻からラブコールを受けている。
しかし、それをはねのけてみんなまとめて欲しいと、絶対欲しいと、何がなんでも欲しいと、くれなきゃ実力行使に出ると脅しにかかって獲得したのが第三課長カミーユだ。
つまり、人身御供とも言う。
「ここには暴れる妖はいないみたいだね」
「油断は禁物だ」
「分かってるよ。でも、つまらないなぁ」
言い合いながらも二人は周囲に気を配るのを忘れない。
否、もはや慣れ、癖というものだろうか。
一通り見た所、これ以上は異常なさそうね。
そろそろ屯所に戻ろうかな。
じきに皆も帰ってくるだろうし。
「沖田さん、一君。もう戻りましょうか」
「そうだね。もう敵、今日は現れないみたいだし」
「あぁ」
奏が出した門を三人はくぐり、この地を後にした。