誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
「・・・鬼を滅した?」
「・・聞いたことがあるのは源頼光とその四天王の話ですね」
山南が顎を指で挟み、思案気に口を開いた。
「源・・あぁ」
思い出した。
酒呑や茨木達に凶刃を浴びせた輩達か。
「消されているとは穏やかじゃねぇな」
「しかも、鬼。これはやはり・・・」
「皇彼方の仕業、か?」
考えなくても分かる。
あの人が絡んでいるのは、今の状況から考えてもおかしくない。
いや、むしろ絡んでいない方がおかしい。
立て続けに天下の元老院に喧嘩を売る真似ができるのは、相当な腕の持ち主か、真正の馬鹿だ。
しかも、当代の課の長が務めあげる中で。
「響、澪ちゃんを」
「分かりました」
「出てくる」
奏は返事を聞くなり腰をあげた。
「奏ちゃん?どこ行くの?」
「四天王の一人、渡辺綱。あづさの先祖だ」
「奏ちゃん!待って!」
そう言う間も奏の足は止まらない。
沖田も慌てて腰をあげ、奏の後を追った。
「あづさというのは?」
「俺達が行ってる高校の生徒で奏のクラスメイトだ」
「ほぅ。つまり人間、と」
「あぁ」
ファントムが奏達が去った方を興味深そうに見つめている。
それから何やら納得したかのようにニヤリと笑った。
「・・・それがどうした?」
「いや?何でもないさ」
自分達も後を追うべく広間を出ていく近藤達を見、広間に残る響と澪を見、ファントムは目を細めた。