誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
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人気のない稲荷の社。
少し薄暗いが、とりあえず本当に人気はない。
「はぁはぁはぁ」
「あづさ、大丈夫?」
「も、無理・・」
腰に手をあて、荒く呼吸するあづさの様子を見やった。
もうこれ以上は無理か。
・・・・ならばここで。
「・・・・・・・姿を現せ」
「・・ヒヤッヒヤッヒヤッ」
奏が冷やかな視線をやった暗闇から妖がうようよと現れた。
闇夜にキラリと光る狼の目のようにその目は捕食者の爛々としたモノだった。
「な、なに?」
「あづさ、離れちゃ駄目」
刀は学校に行くし、目立つからと置いてきた。
しかし、奏の力は何も剣術ばかりではない。
サッとあづさの周りに結界を張り、雷でできた蝶をいくつも出した。
じりじりと睨み合いが続く中、均衡はふいに崩れた。
「奏ちゃん、お待たせ」
「悪い。遅くなった」
「他にもいたからそいつらを片付けてたら手間取っちまったぜ」
「首尾は?」
「もちろん上々だ」
「よし。鷹」
「おうよ」
鷹から愛刀を受け取ると、奏は鞘から刀身をすらりと抜いた。
チラッとあづさの方を見て、鷹に視線を戻す。
それだけで奏の意をくんだ鷹はあづさの横に立った。